朝日のような夕日をつれて'85

第11回公演1985.2.2~2.6,第13回公演7.22~7.28 新宿・紀伊國屋ホール

作・演出:

鴻上尚史


登場人物:出演


部長・ウラヤマ:

大高洋夫

社長・エスカワ:

小須田康人

研究員・ゴドー1:

池田成志

モニター・ゴドー2:

名越寿昭

少年・医者:

伊藤正宏

 

●「朝日のような夕日をつれて」は、突然男5人が女性の手紙を読んで、そのまま唐突に終わってしまうけれど、あれは構造的にどうつながってるんですか?

鴻上「あれは、みよ子っていう女の子の遺書なんですね。いままでの近代合理主義的な戯曲ってのは、おしまいに全部これは精神病院のお話でしたよ、とか笑っちゃうのは夢でしたよとかね、観客にある安心感を与えると同時に、演じる側、作り手も無意識のうちに安心感を得ようとしてる場合があったんじゃないかという気がして。でも時代とか制度とか夢とかそんなふうにきれいにまとめようとしても、とりこぼれるものはあるんだと、それがひとりの女性の呟きなんだ、というところなんですね」

A
「最後の手紙です。なんだか自分がだんだんクールになっていけばいいと思います。
活動家のホットさと、物事に対する、何というか、もう何もありはしないのだというさめたクールさを持てるようになりたいと思うのです。なんかある、と信じ続けているのはあまりにおめでたく、不毛なないものねだりのような気がしてきたのです」

B
「ここ2、3日、何も考えなかったといった方があたっているのかもしれません。何もせずに、ただベッドに横たわって知ってる人の名前を、あげてみるのです」

C
「ある日、私はまことに変な話ですが、友達と不倫の恋について話がしてみたくなりました。結果的にはしなかったのですが、ぶりっ子というかモラリストぶってる女達は、どう考えているのだろうと思ったのです。でも突然、そんな事言ったところでみんなしらけるでしょうし、やめました」

D
「本当は娼婦の話がしたかったのです。みんなが娼婦になったらどうだろう。売春婦じゃないのよ、娼婦。みんなが娼婦の哀しい目と、なんとかの花のような笑顔を持って、追いつめられた『何か』を持っていたならば、みんなみんな、テレビのお人形なんかに熱中しなくてすむのに」

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