2006.05.10

thirdstage.com


作・演出:鴻上尚史


大和田美帆
斉藤慶太
牧瀬里穂
渡部 建
(アンジャッシュ)
安原義人

恋の始まりに理由はない。だけど、恋の終わりには理由がある。ピークを過ぎた女流脚本家は、脚本家志望の淋しい人妻の話を書き、 その人妻は、超売れっ子の美人脚本家の物語を書いた。 脚本家が選ぶのは、仕事か、家庭か、個人か。 初演を改訂。パワーアップ・バージョン!





作者より

だんだんと春になり、いよいよ芝居の季節がやってきました。お元気でしたか?
KOKAMI@network 第8弾、『恋愛戯曲』です。
2001年に上演したものの再演ですが、今回は、新たなキャストです。
まずは、「私に恋に落ちて頂戴」と迫る美人脚本家の谷山役に牧瀬里穂さん。牧瀬さんは、僕と同じで、NHK教育の英語番組で生徒役をやっていらして、他人のような気がしないのです。
で、恋に落ちてよ迫られるのは、アンジャッシュの渡部建さん。お笑いイケメンベスト3の一人です。僕はアンジャッシュのコントを、ずっと、『エンタの神様』とかで見ていて、「この人の芝居は演劇的だなあ」と思っていたのです。
強盗で飛び込んでくる一人は、斉藤慶太。斉藤双子兄弟の弟です。映画『タッチ』とかテレビ『ガチバカ』『王様のブランチ』とかでご存知の方もいらっしゃるでしょう。
『トランス』を兄弟で見に来てくれたのですが、芝居の後、食事でもと、僕の目の前に二人並んで座りました。で、どっちが兄の祥太なのか弟の慶太なのかまったくわかりませんでした。しょうがないので、右・左で覚えていたのに、二人は、トイレに行った後、逆に座ったりして、また、混乱しました。食事しながらクイズをしているようでした。かなり期待できるいい奴です。相棒の女性は、大和田美帆さん。大和田漠さんと岡江久美子さんの娘さんです。ミュージカル『ファンタスティックス』で、バリバリやってました。
そして、テアトルエコーのエース、安原義人さん。僕は『ら抜きの殺意』を見て、
「なんてうまい人なんだ」とうなりました。

というメンバーになります。
初演は、三つの世界が迷宮のようでよく分からなかったのですが、今回は、三つの世界がちゃんと分かりながら、なおかつ迷宮になるように考えています。
なので、かなり、改訂版っぽくなるの思います。

恋愛に悩んでいる人も、恋愛真っ最中の人も、恋愛からずいぶんご無沙汰の人も、恋愛なんてもういいやと思っている人も、キュンとなる話になると思います。恋愛をいろいろと考える作品です。
恋愛とはなんだろう、恋愛にどうして人はこだわるのか、恋愛と仕事の関係はなんだろう、など、いろいろと恋愛を中心にして試行錯誤しました。
をよろしければ、ぜひ、お越しください。んじゃ。

(鴻上尚史)

<STORY>

テレビドラマの脚本家、谷山真由美(牧瀬里穂)がカンヅメになっている人里離れた山荘に、
テレビ局の若手プロデューサー、向井正也(渡部建)が訪れるところから物語は始まる。

谷山は、おしゃれでドラマチックな恋愛ドラマを書きヒットを続けている有名なテレビドラマの脚本家。だが、向井が勤めるテレビ局から依頼された開局30周年記念ドラマの台本がまったく書けないまま放送日まで一ヶ月を切ってしまい、向井が催促にやって来たのだった。

「先生、台本を」と言う向井に、谷山は「一枚もできてないの」と答える。
「僕にできることなら、なんでも協力しますから」と焦る向井に、
谷山は「本当になんでもしてくれるの?」と念を押す。
「もちろん」と応じる向井。
そして谷山は向井にお願いをする、「私と恋に落ちてちょうだい」と。
「恋に落ちて胸がキュンとしたら、本物の恋愛物が書けると思うの。表面だけが派手な作品じゃなくて、本当に見る人の胸をかきむしるような作品を書けると思うの。」と言葉を続ける。
谷山は本気らしい。
突然の理不尽な命令に困惑する向井だったが、
「完成した台本を持って帰らなければクビ」という上司の命令と、
「歴史に残る名作を書きたい」と言う谷山の真摯な思いに動かされ、彼女と恋に落ちようと努力する。
しかし、誠実ながらも不器用で融通のきかない向井は「恋をなめないで!」と結局谷山を怒らせてしまう。
好きになったふりや、なんとなくいい感じだなと思うことはできても、本当に好きになることなんてできるんだろうか、とボヤく向井に、「恋とは理不尽で計算できず比較もできないものです」と谷山のマネージャー・寺田俊司(安原義人)は力説する。「恋とは、唐突な理不尽」であり、「私と恋に落ちて」という谷山の言葉は、唐突で理不尽な愛の言葉そのものだ、という寺田の説得に、向井は飲まれてしまうのだった。
怒鳴って部屋にこもってしまったかに見えた谷山は、即座に台本の冒頭シーンを書き上げていた。

谷山が書き上げた台本にさっそく目を通す向井。
その内容は、夫との平凡な生活に息をつまらせながら生活している主婦の、夫に隠れて投稿したシナリオがテレビ局の若手プロデューサーの目にとまり、その台本を手直しするためにそのプロデューサーが山荘を訪れる、というものだった。
二人は徐々にお互いを意識し、惹かれあう。

疲れた主婦が書いたシナリオは、有名女性脚本家が駆け出しのプロデューサーに、
「私と恋に落ちろ」と命令するところからはじまるものだった。

現実の向井と谷山をモチーフに台本は進みだし、最初は困惑していた向井は腹をくくる。

「私のことを好きになってね」という谷山に「すごく好きです。本当に好きです。ものすごく好きです。」とは言うものの、携帯が鳴りだし、また谷山を怒らせてしまう。電話の相手は向井の婚約者だった。

なんとか台本を完成させようと試行錯誤を続ける谷山と向井と寺田だったが、若いカップルが乱入してきて事態は一変する。
突然押し入って来た彼らは、杉村仁(斉藤慶太)と泉川京子(大和田美帆)と名のり、自分たちは、郵便局を襲い、警察に追われ、この山荘に逃げ込んできたのだと三人に告げた。
ライフルで脅され、縛り上げられ、もう脚本を書き上げることは不可能かと思われたその時、
谷山が有名な脚本家であることを知った杉村は、あるアイデアを思い付く。
「俺達二人のことを書け!そして、俺達のことを歴史に残せ。」と杉村は命令する。
「とびきりの名作を書け!見た人がずっと覚えてて、海外でも紹介されて、タランティーノまで届くような名作を書け!」そうすれば「俺達の名前は永久に残る。」と。
谷山の作品に二人のことも登場人物として実名で出す条件で、なぜか五人はとびきりの作品を書くために協力しあうことになっていった・・・

[東京公演]
2006年5月30日(火)~6月11日(日)
池袋・サンシャイン劇場(地図)

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[大阪公演]
2006年6月16日(金)~17日(土)
大阪厚生年金会館芸術ホール(地図)

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[北海道公演]
2006年6月21日(水)~30日(金) 道内5会場にて

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