どんどん、世の中がギスギスしていくような感じがあります。自分自身も余裕がなくなっていく気持ちになります。
電車が駅に着いても、動かないままドア付近で他の乗客をブロックしている人を見ると、無意識に苛立っている自分を発見します。どんどん、世の中が「不寛容」になっていると感じます。
そんな時、一冊の本『ネットと愛国』(講談社文庫 安田浩一 著)に刺激を受けて、作品を書き上げました。
2012年、『虚構の劇団』の第8回公演となりました。
4年たって、時代はますます、不寛容になっていると感じます。
それは、他人事ではなく、自分自身の問題でもあります。
どうして不寛容になってしまうのか。どうして差別してしまうのか。
どうして憎むのか。どうして愛するのか。
人間の心の動きと世の中の動きを、深刻にではなく面白く、重くではなく軽やかに、悲しくではなく笑える形で追及し、描きたいと思います。
どうしようもない差別をするのも人間なら、その差別に怒り、戦うのも人間で、その人間の絶望と希望が表現できればいいなと思うのです。
今回、じつに魅力的なキャストに出演してもらうことができました。
風間俊介さんは『ベター・ハーフ』でその上手さに唸りました。
岡本玲さんは抜群の実力のある若手女優です。
頼れる兄貴の久ヶ沢徹さんやチャーミングな早織さん、そして信頼の福田転球さん、言葉を越える藤田記子さん、『虚構の劇団』から三上陽永、そして実力若手田村健太郎さん、いつもの大高洋夫を迎えます。
エネルギッシュな若手と頼もしいベテランのコラボがじつに楽しみです。
まったく新しい『イントレランスの祭』になると確信しています。ご期待下さい。
鴻上尚史