その時、彼は、全身の力をふりしぼって走り抜け、
次の「リレーする人」にバトンを渡した。
バトンは左手で受け取られ、素早く右手にもちかえられた。
それは、昔から変らない、リレーのルール。
嘆く意味などありはしない。
その時、僕は、リレイヤーを求めて街をさまよっていた。
「リレーする人」は街のどこにもいなくて、ただ、深夜のゲームセンターにいた小学生の狂気の目だけが僕を安心させてくれた。
それでも、彼はリレイヤーになれるのかという問いは、僕を久しぶりに絶望的な気分にさせてくれた。
その時、僕は、彼女に会った。
彼女が本物のリレイヤーであって、トリックスターなどでは決してないことを僕は無神論という神に祈りながら、 なかば信じようとしていた。
それは、彼女の目が、あのゲームセンターの小学生の目に限りなく近かったからかもしれない。
その陽気で空虚な目は、誰からバトンを受け取り誰にバトンを渡せばいいのか、心底途方にくれているように見えた。 |
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